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心にいつも海鳥を - 『潮風に吹かれて』編


陸から海鳥を観察しやすい場所とは


      場所:千葉県館山市州崎
日付:2007年5月4日


皆さん、こんにちは。BIRDER編集部のヒヨ吉です (^_^)

ゴールデンウィーク最中の5月4日、久しぶりにフィールドで観察をする機会に恵まれました。いつも貴重な情報を教えてくださる「城ヶ島沖の海鳥観察グループ」の皆さんが、海鳥一斉調査をするということを聞き、さっそくで申し込みをさせていただきました。

私の担当は千葉県館山市洲崎。調査のコアタイムが8:00〜12:00ということで、ヒヨ吉の地元、神奈川県から当日朝の移動では調査時間に間に合わないため、まだ暗いうちに車で洲崎へ向かいました。

夜明けの少し前、水の張ったばかりの谷津田(谷間を開墾してできた田んぼ)の脇を通ると、ココココ……と、シュレーゲルアオガエルの声を聞こえてきます。子供のころはよく田んぼで遊んだヒヨ吉は、そのカエルの鳴き声についついどろんこ遊びをしたくなりましたが、今回は大事な任務があるので泣く泣く(?)通過。

天気は晴れ。早朝からの調査は気持ちがいいですね。

早朝の洲崎。トビが朝日の中で風が来るのを待っているような姿が印象的でした


しかし、残念ながら沖合の視界はやや不良。海面は数百メートル先から、もやもやっとしています。それに可視領域を通過していくのはウミネコばかり。今日はハズレかな? でも、鳥が出なくても現場に来られるだけで幸せなヒヨ吉です。


もやがかかる沖合。漁船が出ていましたので、その横を通る海鳥に期待しましたが、見つかるのはウミネコばかり


日の出を過ぎてしばらくすると、陽射しが強くなってきました。もやは、先ほどと比べると幾分は改善されたようです。明るさの確保よりも倍率を上げることが大切なように思えて、望遠鏡の接眼レンズを30倍から60倍に変更して沖を見てみました。

すると、水面すれすれを白いものがチラチラ横切っていきます。おっ、オオミズナギドリ!


オオミズナギドリ。カメラではとらえられなかったので、スケッチを。お腹と翼の下の一部が白いのが特徴です


それに混じって、黒っぽくて一回り小さなミズナギドリが時折望遠鏡に入ってきました。


むむむ、あれは何だ???


私は早速、海鳥識別ハンドブックを開きました。P33〜34の記述を見ると、ハシボソミズナギドリ(以下、ハシボソ)とハイイロミズナギドリ(以下、ハイイロ)のようです。ほとんどのものは下面が黒く見えているのでハシボソのようですが、よく見ると翼の下面が白っぽく見えるものとそうでないものがいます。翼の先も図鑑のように上に反っているような印象です。

ハイイロの数はハシボソに比べると数としては少なめですが、州崎にハシボソとハイイロがいることはまず間違いないようです。(注:ハシボソにもハイイロのように翼下面の白っぽいものがいるようですので、識別には注意が必要です)


ハイイロミズナギドリ(左)とハシボソミズナギドリ(右)。翼下面が淡く見えるのが、ハイイロミズナギドリの特徴


当日は一斉調査日でしたので、同じ時間に調査をしている城ヶ島から時々携帯電話にメールが入りました。かなりの海鳥が出て賑わっているとのこと! うらやましかったですね〜。

でも、「同じ日に洲崎は海鳥が少なかった」というデータもあって初めて城ヶ島との差がわかるわけですから、洲崎で見ている事実そのものが大切です。


洲崎で調査をしてから地図を確認すると、改めて城ヶ島で海鳥がたくさん観察されることが不思議に思います。

下の地図をご覧ください。春の渡りで北上する海鳥たちが伊豆半島を抜けて房総半島から先へ北上していきたいと思ったら、どう考えても最短ルートは伊豆半島石廊崎から大島の南を通って洲崎沖を廻っていくコースなはずです。なぜ、一回相模湾に入って、しかも東端の城ヶ島の沖を通過していく必要があるのか、私には謎です。


私がいた千葉県洲崎(右の赤い点)と神奈川県城ヶ島(左の赤い点)の位置関係。北上する海鳥がいちばん効率よく移動するならば、城ヶ島沖合にはいかないはず。なのに……


今まで2度お邪魔した城ヶ島での海鳥観察は、鳥が発見しやすかったですし、望遠鏡で追うこともわりとスムーズにできたのに、今回の洲崎での観察は、とても難しいものでした。

一人であることや鳥が遠いこともありましたが、それ以上に「観察のしにくさ」を感じました。この違いは何だろうと考えてみました。

まず、視点の高さが違いました。洲崎で海に近づいた方が観察しやすいだろうと思って、海岸ぎりぎりまで近づいてみましたが、それだと波のうねりで海鳥が一瞬見えなくなると、追いきれないことがありました。鳥の飛行スピードに合わせて望遠鏡を移動させても、次のうねりで鳥を再び視野に入れることは至難の業でした。そのうねりがあっても、鳥の姿が見えるくらいの高さが必要のようです。


砂浜や視点の低い場所での観察は成果がでにくいです

視点が低いとうねりの中に鳥が隠れてしまったときに見失ってしまうことが増えます


視界の広さを求めようと、あまり高いところまで上がってしまってもだめなようです。

海鳥は背中が地味な色合いのものが多いので、海面を見下ろすような場所では、海の色に溶け込んでしまって発見と識別が難しくなってしまうのです。発見しやすい空バックになったときには、あまりにも遠くて識別ができません。


鳥の背面が黒いことで、あまり高いと発見しにくくなり、空バックで見つけられる場合は距離が遠すぎて識別が困難になります

高さが10メートルを越えると観察がしにくくなります


また、ウミスズメ類などの海鳥は直線的な飛行をするものがほとんどですが、その飛行の中で高度をよく変えます。赤い矢印のように直線飛行する海鳥類が時々空バックで観察でき、さらに多少の波のうねりがあっても鳥の姿が見続けることができる海水面から6〜7メートルの高さに視点があるような場所がベストです。


海鳥は基本的に直線的に飛行しますが、微妙に飛行高度を変えるため、見ていると時々空がバックになるような瞬間(赤い矢印のところ)があります。そこが海鳥発見のポイント!

 


陸からの海鳥観察スポットとして脚光を浴び、これまでほとんど日本国内では例のない海鳥の定点での継続調査も行われている城ヶ島ですが、その事実が発見されたのは最近で、今から3年前、2003年のことでした。

海鳥が比較的岸に近い沖合を通過することだけでなく、その微妙な視点の高さも海鳥の観察地として適していたのが要因のようです。


水平線よりも上に飛ぶ鳥を探すのが陸からの海鳥発見のコツ。しかし、ハズレの日も多し。それをなぜだろうと不思議に思ったり、次回はきっと見られるはず!、と常にポジティブになれる人が海鳥観察には向いています


海に囲まれた日本の海岸線の総距離は34,000キロメートルあります。皆さんのお近くの海岸に、人知れない海鳥観察のホットスポットがあるかもしれませんね。ヒヨ吉は日本全国へ城ヶ島のような海鳥観察スポット探しにいきたいと思っております!
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