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2021年9月号

 

 

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サンコウチョウは“決め打ち”で狙う鳥だ!(2)
 
 さて、本命のサンコウチョウだが、夕方近くになって遠くからわずかの間、声が聞こえた。キャンプ場の外で鳴いたのだろう。すぐにでもその場所まで飛んでいきたいが、きっと探している間に日が暮れてしまう。編集スタッフが「鳥はいいから、そろそろ晩メシの準備始めろよ!」と、目で促しているのがわかる。鳥見とキャンプを同列で楽しむのがバーディングキャンプの趣旨だ。要は誌面映えするようなキャンプシーンも作らなくては、この記事がボツにされてしまうということ。しばしサンコウチョウは忘れて、本来のキャンプに徹するのが安全策(?)といえそうだ。
 
 
 シュラフに潜り込んだ後、頭の中で声がした方角と地図を重ねながらシミュレーションをくり返し、サンコウチョウがいるであろう地点を推測、夜が明けるとすぐさまテントを飛び出して森へ向かった。しばらく歩くと、樹林に覆われた薄暗い谷間の奥から「ホイホイホイ」と鳴く声。歩を進めるごとに声は大きくなり、しかも、同時にいくつかの方向から聞こえてくるようになった。複数羽いるに違いない。ひときわ大きな声のする樹間に双眼鏡を向けると、絡み合った枝葉の間に怪しく光る“青い眼”が目に入った。図鑑で確認するまでもなく、ひと目でわかるサンコウチョウの特徴だ。体は手前に立つ木の幹で隠されているが、長い尾羽がその幹を通り抜けて、一本の枝のように伸びている。見事な体躯の雄成鳥だった。
 
見事な体躯のサンコウチョウ雄成鳥。静かな山中でその姿を独り占めできたのは、格別の喜びであった(N)
 
 読みは見事に的中。そして、サンコウチョウを“独り占め”という目論見通り、メンバーのほかは誰もこの場にいなかった。
 
“チェアリング鳥見”のススメ
 
 キャンプ場をチェックアウト後、再び同じ場所に向かった。もはや歩き回って探す必要はない。朝、成鳥雄を観察したポイントに椅子を並べて、コーヒーを飲みながら、もう一度サンコウチョウが現れるのを待つことにした。
 
 こうした、椅子に座ってのんびり過ごす“野遊び”は、「チェアリング」という言葉で認知されつつある。小型のザックに収納できるほど軽くて携行しやすく、長時間座っていても快適なアウトドアチェアが普及してきた、といった背景もあるのだろう。
 
サンコウチョウが現れた林縁に椅子を並べて、“チェアリング鳥見”も楽しんだ(N)
 
 ゆったりと腰掛けて定点から観察すれば、人の動きに対して敏感な鳥の警戒心も薄れ、目の前に姿を見せることもよくある。このときも、午後になるまで何度かサンコウチョウが現れたほか、オオルリやセンダイムシクイなどもじっくりと観察。絶え間ないさえずりをBGMに夏鳥ウォッチングを堪能できた。(文●新橋拓也)
 
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