知っておきたい、フィールドマナー

バードウォッチングとは、鳥の生活エリアに入って鳥の姿や行動を観察することです。観察は「観て察する」と書くように、単純に目に入れるだけでなく、見ている鳥の状況や状態を推し量ることが大切です。 言葉の通じない鳥のことを察することは簡単ではありませんが、人と鳥が互いにストレスを感じない観察をすることで、鳥を近くで観察できたり、自然な姿を見られるなど、満足感の高いバードウォッチングにつながります。

【自力で野鳥観察を楽しもう】
最近、観察道具(双眼鏡や図鑑など)を持たずにカメラだけで鳥を見に来る人や、自分で鳥を探さずにすべて他人任せにする人、見ている鳥が何か知らず撮影だけする人を目にします。バードウォッチングのスタイルは人ぞれぞれで、道具に頼らず鳥を探したり、撮影後に調べるといったやり方もあります。ただ、せっかくフィールドに出ているのですから、鳥を自分で探したり、現地での観察を通して鳥を知ることを楽しみましょう。
【鳥が逃げない観察スタイルを身につけよう】
見つけた鳥に一直線に近づけば、たいていは逃げられます。鳥の立場で考えると「自分よりも大きな生物が」「自分のほうを見ながら」「まっすぐ向かってくる」のです。襲われると思われても仕方ありません。基本的に鳥は人、特に視線を恐れるので、鳥を見つけたら、まずは立ち止まって周りの状況を見ます。そして最短距離で近づこうとせず、少し遠回りでも鳥に気づかれにくい近づき方を探したり、近づくときも身を隠しながら、鳥の方向をあえて見ないようにしてみましょう。鳥の動きを先読みし、移動先を予想して待つことができれば、鳥の自然な行動を妨げず、驚くほど近くで観察できることがあります。

【鳥は自然のままで、餌付けや音声で近づけない】
自然の中で楽しむバードウォッチングでは、できるだけ自然のまま楽しむのがスマートです。例えば見通しが悪いからといって草や枝を折ったり、近くで見たい・撮りたいという目的で餌をまいたり、鳥の声を流して誘引することは、その場所の環境や鳥の自然な行動を歪めてしまうことになり、こうした行為が禁止されている場所もあるので、やらないようにしましょう。また暗い場所での撮影でストロボを使うと、強い光が鳥にストレスを与えるので、使わないようにしましょう。

【鳥の警戒サインを見落とさない】
鳥は人間の動きをよく見ています。そして逃げる前に何らかのサインを出す場合があります。 例えば採食中の鳥に近づくと、まずは動きを止めてこちらを見ます。人がそこで動かなければ、こちらを警戒しつつ採食を再開するかもしれませんが、さらに接近したり大きな動きをすると、採食を完全にやめて逃げる体勢になります。首を伸ばして体を細く小さく見せたり、前かがみになって翼を少し動かすといった動きは、鳥がストレスを感じて逃げる前兆なので、静かにその場から離れましょう。
【繁殖中は近づかない】
鳥にとって繁殖は最も大事であり、かつ巣や卵、雛を守るために逃げるのが難しい状況です。食物をくわえた鳥(親)がそばで鳴く、雌がさえずる、大きな声で鳴きながら周囲を飛び回る、ケガでうまく動けないようなしぐさ(擬傷)を見せる、 これらの行動は巣や雛に人が接近しすぎたときに見られるものなので、速やかにその場を離れましょう。親鳥は外敵から自身と雛の身を守りつつ、抱卵や給餌などで大きなストレスのかかった状態です。ここに人の存在まで加わってしまうとストレス過剰となり、巣に戻らなくなったり、最悪、営巣放棄にもつながります。
また営巣を直接じゃまするだけでなく、人が注目することでカラスなどの外敵に繁殖中と知られ、巣が襲われる場合があります。 一部の水鳥やツバメなど、鳥の中には、子育てを見られることの影響が少ないと考えられるケースもありますが、外敵に営巣中と知らせるリスクはあるので、観察するにしても短時間にしたほうが安心です。


【観察情報のインターネット公開は慎重に】
SNSの広まりとともに、観察記録や写真をインターネットに公開することが身近になりました。バードウォッチャー同士の交流など、インターネットにはよい面がありますが、注意すべきこともあります。例えば珍しい鳥の出現情報を公開した結果、その場所に人が殺到して地元住民とのトラブルとなることがあります。また人気の鳥の繁殖情報が公開されたことで人が集まってしまい、営巣放棄につながったケースもあります。インターネットで鳥情報を発信するときは、まず公開して問題のない情報かどうかを考えましょう。そして珍しい鳥や人気の鳥は場所を公開しない、公開はその鳥が飛去した後にする、写真をアップする場合は付加されているGPS情報を削除する配慮をしましょう。
【バードウォッチャー同士、気持ちよく鳥を見よう】
バードウォッチャーが集まる場所では、観察中の人の動きにも注意です。場所の取り合いや観察している人のそばで大声を出す、観察や撮影をしている人の前に立つといった行為はトラブルの元です。声をかける場合はまずあいさつから。多くの人が観察している場面では、自分がある程度観察したら場所をゆずることも大切です。
【バードウォッチャー以外の人へも配慮を】
例えば私有地などへの無断立ち入りや違法駐車をしないといった、当たり前のルールを守りましょう。三脚の持ち込みや動植物の採取・損傷が禁止されている場所ではルールを守りましょう。ほかにもゴミのポイ捨て、人や住宅に双眼鏡やカメラのレンズを向ける、遊歩道をふさいでほかの利用者の往来を妨げることはマナー違反です。
もし社会全体で「バードウォッチャーはマナーやルールを守らない」というイメージがつけば、バードウォッチャー立ち入り禁止といった事態にもなりかねません。「鳥を見ているのは自分だけではない、その場所を利用しているのは自分たちだけではない」という、周りへの配慮の気持ちを忘れずに鳥を楽しみましょう。
