【BIRDER連載試し読み】 ゆるトリ雑学

1時間目 そこまでしてるの!? カッコウの驚きの戦略(2025年1月号掲載)
文・イラスト てんキュー

名前の通り「カッコー」という鳴き声が特徴的なカッコウは、托卵で有名な鳥だ。托卵とは、カッコウであればモズなどが宿主となり、ほかの鳥の巣に卵を産みつけて子育てをさせることで、孵化したカッコウの雛は宿主の卵や雛をすべて巣から突き落とす習性がある。この托卵を行うカッコウの仲間は、日本ではカッコウ、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチが繁殖しているが、それぞれ宿主にする鳥が異なるというのも巧みな戦略だ。例えば、カッコウはオナガ、モズ、オオヨシキリなど、ホトトギスは主にウグイス、ツツドリはムシクイ類、ジュウイチはコマドリやコルリを狙い、同じ鳥に托卵しないようにうまく分けている。
まんまと托卵され、よその子を数週間育てさせられるばかりか、我が子まで失う宿主はたまったものではない。そのため、宿主はカッコウの卵や雛を排除すべく“偽物”を見抜く術を磨いてきた。対してカッコウも、自身の卵の模様や大きさを宿主のものそっくりに変化させ、宿主の目をあざむく。
さらに、オーストラリアのアカメテリカッコウ(ブロンズカッコウ)という種は卵は似ていないが、雛の姿を宿主の雛に似せることまでやってのけるという。宿主となる親鳥は卵のときには巣からアカメテリカッコウを排除しない代わりに、孵化してから托卵された雛を排除しようとするため、雛の姿を似せたのだろう、といわれている。
卵や雛自体を偽装させるだけでなく、托卵の方法にもテクニックが光る。これも海外の例だが、ヨーロッパヨシキリに托卵した直後に、天敵のハイタカの鳴き声を真似ることで宿主をおびえさせて卵から気をそらし、托卵がバレるリスクを下げているという研究もある。
ただ、このようにさまざまな戦略を駆使する割に成功率は決して高くないようで、カッコウだけが増え続け宿主が絶滅……という報告はない。カッコウは托卵戦略を、宿主は見抜く技術を磨く。彼らのいたちごっこは今後も続いていくのだろう。

PROFILE
てんキュー
99%鳥専門イラストレーター。幼いころから鳥類図鑑と鳥が登場する絵本ばかり読んでいた生粋の鳥オタク。鳥類の魅力を広め“鳥好き”を増やしたいという思いから、鳥についての基礎知識や雑学をイラストたっぷりで楽しく解説するウェブサイト、コトリペストリを運営中。