ようこそ、鳥の名前の世界へ。「鳥たちの素敵な名前の物語」発売!
Auther:BIRDER
2026年8月25日㈬更新
鳥の名前を“分解”する
クイズ番組を見ていたとき、ある生き物の長い名前が出題されていました。出演者たちは「こんな長いの覚えられない!」と悲鳴を上げていましたが、見ていた編集N村はそんなに苦も無く覚えることができました。それは記憶力に自信があったから…ではなく、名前を1つの文字列ではなく、いくつかの単語に分けて見られたからです。例えば、
- リュウキュウアカショウビン
という鳥がいます。日本の鳥の名前の中でも屈指の長名で、鳥を知らない人にとっては呪文のように聞こえる文字列です。でも、これもいくつかの単語に分解できます。漢字にするとわかりやすくて「リュウキュウ(琉球)」「アカ(赤)」「ショウビン(翡翠)」となり、つまりは南西諸島にいる赤いカワセミという意味になります。鳥に限らず、長い名前の多くはこうして分解すると覚えやすくなります。

名前の素数?
と、ここで1つ疑問が浮かびました。「リュウキュウ」は地名、「アカ」は色だと分かるけど、「ショウビン」がなぜカワセミなのか-?
長い名前を分解し続けると、これ以上小さくならないところまでにたどり着きます。私はこれを学生の頃に苦手だった数学にちなみ「名前の素数」と呼びました。素数とは1とその数以外では割れない数(5、13など)で、1より大きい数は素数の掛け算に分解できます(20=2×2×5)。さっきの名前の分解に似ていますよね。素数がわかれば問題が解けるように、名前の素数もその意味がわかれば、名前を深く知る手がかりになるはずです。
まぁ、そんな理屈っぽい話は抜きに、単純に「ショウビンって何?」「スズメってどういう意味?」、そんな素朴な疑問に答える本が、2026年2月3日に発売となった『BIRDER SPECIAL 鳥たちの素敵な名前の物語』です。
人気連載の単行本化
この本には元となった記事があり、バードウォッチング月刊誌BIRDERで2020~2024年まで載っていた同名連載の単行本化です。著者の大橋弘一さんは「形態や生態といった理系の話だけが鳥の楽しさじゃない、歴史や人とのつながりといった文系の話も含めて、鳥を幅広く知って楽しんでほしい」と精力的に活動しています。この連載でも日本史を掘り下げたり、古典文学をひも解くなど、ほかの記事とは違う切り口と、野鳥写真家でもある大橋さんの素敵な鳥写真との組み合わせが人気でした。ちなみに編集N村の母も、連載時に「BIRDERで最初に読むのはこのページ」とお気に入りでした。
単行本化に当たっては、連載で載せた情報をアップデートするだけでなく、いくつかの新要素を加えました。一番わかりやすいのは新しい鳥の追加です。連載で取り上げた53種に加えて、スズメ、フクロウ、ヒヨドリ、ツバメ、アオジ、カケスの6種が新登場です。「あれ、スズメって連載になかったっけ?」と思うかもしれませんが、連載中で取り上げたのはニュウナイスズメでした。さすが身近な鳥の筆頭ともいえるスズメ。ニュウナイスズメと分けても興味深い名前の話があったというわけです。
それと編集N村が個人的に好きな鳥で、名前の語源がよくわからなかったので、大橋さんに無理を言って収録してもらったのがカケスです。カケスの現在の漢字表記は「懸巣」で、かつては「掛巣」とも書いたらしいですが、鳥が巣を掛けること自体は普通なのに、なぜあえてこの鳥にその意味の名前を付けたのかが疑問だったのですが、大橋さんの調査のおかげでその謎が解けました(真相は本を読んでのお楽しみ)。

また、もう1つの新要素としてこだわったのが、名前の語源を調べるのに必要不可欠な古典文献の紹介です。この本にはみんなが知っている「古事記」「万葉集」だけでなく、「大言海(だいげんかい)」や「堀田禽譜(ほったきんぷ)」「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)」といった歴史の教科書でもなかなか見ないものまで、実に多種多様な文献が登場します。
著者の大橋さんはその文献を1つ1つ読み解いて鳥の名前を取材したのですが、連載の時は紙幅の関係で書名を挙げるだけでした。鳥の名前、ひいては鳥自体が私たちの暮らしに密接にかかわっていたからこそ、さまざまな文献に鳥が登場するので、単行本化ではその文献をもっと紹介したいと思い、脚注や別ページを使って解説しました。

無限に広がる鳥名探求の旅へ
この本で紹介した鳥は59種、加えて「〇〇カモメ」「〇〇カモ」「〇〇シギ」「〇〇ムシクイ」の紹介もしているのですが、日本の鳥の種数は約600種に対して1割程度は少ないと思うかもしれません。でも、最初の話を思い出してください。この本で掲載した鳥はいわゆる「名前の素数」に当たる鳥たちです。
例えばこの本では「クマゲラ」というキツツキの紹介の中で、キツツキを示す「ゲラ」の意味についても書かれています。「ゲラ」が何を意味するかが分かればしめたもの。例えばコゲラは「小さい(コ)×キツツキ(ゲラ)」、オオアカゲラは「大きくて(オオ)×赤い部分のある(アカ)×キツツキ(ゲラ)」と、語源が見えてきます。日本の鳥の和名は「名前の素数」に大きさや色、地名を追加してできているものが大半なので、この本で語源の物語を知れば、多くの鳥の名前の付けかたがわかるのです。
それでもチョウゲンボウのように、大橋さんの調査をもってしても語源のわからない鳥はいたそうです。双眼鏡やカメラといった十分な観察機材のなかった時代に人がどのように鳥と向き合い、そして名前を付けたのか、その興味深くて素敵な物語を探す旅に、この本を通じて出かけてみましょう。

刊行記念オンラインイベントのアーカイブを公開中
2026年3月6日㈮と5月22日㈮の2回にかけて開催した、本書の刊行記念オンラインイベントのアーカイブを、BIRDERの公式Youtubeチャンネルで公開中。ぜひご視聴ください。